はじめに
本記事では主に,「退職時のお金の話」について紹介します. 例えば雇用保険は失職したときのセーフティネットとして機能しますが,例えば「自主都合退職と会社都合退職の場合では支給される金額が変わる」って言いますよね.では実際,どれくらい変わるのか,ということを知っていますか? また,「退職したら確定拠出型年金の手続きを6か月以内にしないと損をする」ということを知っていますか? このようなことは,退職する前に知っておくべき事柄です.
雇用保険
さて,まずは雇用保険についてです. 基本的に正社員は,雇用保険に加入しています. なお,雇用保険は事業者と従業員の双方が負担することになっています(とはいっても,どちらにせよ給料から引かれているので,実質的には従業員が全部負担しているといってもいいのですが……).
雇用保険の仕組み
さて,雇用保険は,失業した従業員が再び就職したり,起業したりと生活を立て直すまでの間に,給付を受けることができる制度です.そして,「いくらの給付を受けられるか」は,それまでにいくらの保険料を払ってきたかによって決まります.
何日分の給付を受けられるか
例えばこのページ で計算することができますが,比較的短期の利殖の場合,以下のようなことがわかります.
- 30歳未満で,かつ5年未満の場合,自己都合であろうが会社都合であろうが,給付は90日分
- 30歳以上35歳未満で,かつ1年以上5年未満の場合,自己都合であれば90日,会社都合であれば120日(1年未満であれば90日)
これによってわかることは,退職時に30歳を超えているかどうかが,給付の期間に大きく影響するということです. まあこれのために退職を我慢するのは馬鹿馬鹿しいですが,会社都合で退職せざるを得ないとき,29歳11ヶ月であれば,30歳になるまでどうにか粘るというのも一つの手です.
いくらの給付を受けられるか
業種や年齢によって異なりますが,30歳未満の場合,日額は上限6945円となり,これを90日分受ける場合,最大でも625,050円の給付となります.この額の給付をもらうためには,離職前6ヶ月間の賃金総額(残業代や通勤手当,住宅手当を含みますが,ボーナスは含みません)が,最低でも2,500,000円ある必要があります.つまりは,年収500万円以上の人であれば,最大の給付を受けられるということです.(逆に言えば,それ以上の人は,ある意味過大に保険料を払っているということにもなります.) それ以下の方の場合は,先ほどのページ で計算することができますが,例えば年収300万円の人であれば日額は5587円となります.
税金・年金の猶予
税金といっても色々ありますが,その中でも住民税や国民健康保険は前年度の所得によって決まりますから,退職したところで請求が止むことはありません(もちろん,その次の年の住民税等は減ると思いますが). こういう場合には,「猶予」「減額」という制度があります. 猶予期間は原則として1年以内となっています.これらの制度は,地方自治体の役所に行って申請することで受けることができます.
猶予だけでしょ?じゃあ,こっそり払わなくてもいいんじゃない?
……と,考える人もいるかもしれません. ですが,猶予と延滞には大きな違いが一点存在します. それは,延滞金の利率です. 例えば大田区の場合 では,延滞金の利率は通常年8.7%ですが,猶予期間中は年0.9%となっています. ……とはいっても,違いが分かりにくいでしょうか.簡単な計算ですが,10万円の税金を1年間猶予した場合,1年後には10万900円払えばよいのですが,延滞した場合は10万8700円払わなければなりません.手続きをするだけで,7800円の損を避けることができるのです.
確定拠出型年金について(重要!)
最近では,確定拠出型年金というものがありますよね.これは退職時にはまだもらえません. 6ヶ月以内に再就職出来たら確定拠出型年金を移せばよいのですが,その見込みがなかったり,転職先に確定拠出型年金の制度がなかったり,あるいは自営業になったりする場合には,個人型確定拠出年金(iDeCo)に移す必要があります.しかし,6ヶ月以内に移さなかった場合,「国民年金連合会」に自動的に移換されてしまいます.これには,以下のようなデメリットがあります.
- 運用や積立ができない
- 移換手数料4,348円がかかり,また月額管理手数料52円がかかる
退職金・パッケージについて
ところで,退職する際にもらえるお金もありますよね.いわゆる退職金というものです. IT業界,特に外資では退職金を出す場合は少ないですが,会社都合での退職となる場合には,退職金が割り増されたり,退職パッケージを出すことが多いです.例えば,Googleが2023年3月に行ったレイオフでは,早期に同意した従業員に対して,最低でも1年分の給与を支払うという内容でした.なお,退職金は(多少優遇がありますが)税金がかかります. なお,退職パッケージに不満があるなどの場合には,弁護士に相談して交渉を行うこともできます.
まとめ
退職する際には,雇用保険の給付や,税金・年金の猶予,確定拠出型年金の移行などについて,しっかりと考えておく必要があります. また,退職金や退職パッケージについても,会社都合で退職する場合には,しっかりと交渉することが大切です.