DeNAはいわゆるメガベンチャーと言われる企業の一つです. 事業の柱や財務状況なども分析しながら,就職先の候補として検討してみましょう. 公開情報をもとにまとめますが,主観が一定程度含まれていることをご了承ください.
基本情報
- 創業年: 1999年
- 従業員数:2,194人(連結),1,326人(個別)
- 初年度エンジニア標準年収:500万円~(賞与,固定残業代45時間,確定拠出年金含む)
- 固定残業代・賞与を含まない初年度月収目安:約21.6万円
- 平均給与: 856万円(賞与,残業代等含む)
- 平均年齢: 37.4歳
- 平均勤続年数: 5年7ヶ月
- 開発経験:必須要件に記載なし
- コーディングテスト:あり(Webテストがおそらく相当する)
- 上場:東証プライム
福利厚生情報
- 勤務時間:スーパーフレックスタイム制(コアタイムがないフレックスタイム制)
- 有給休暇:初年度は12日で,在籍期間に応じて最大20日付与.積立休暇制度があり,失効する有給休暇を用途を限定して積立てることができる(年10日が上限)
- その他休暇:生理休暇,母性管理休暇,通院休暇,休職制度あり
- 結婚・出産にまつわる休暇/お祝い金,ベビーシッター割引補助などが存在する
より詳細な情報はDeNA公式の福利厚生ページ にて.
開発経験について
エンジニア職の募集要項および,新卒エンジニア向け会社説明資料に目を通しましたが,特に開発経験が必須とは記されていませんでした. とはいえ,「求める新卒エンジニアの人物像」には「技術・モノづくりが好きな方」「様々な技術領域に挑戦しながら自分の可能性を広げ,成長していきたい方」とありますので,実際には開発経験がある方が有利に働くと思われます. また採用フローには「Webテスト」とありますが,これはコーディングテストのことだと思われます.コーディングテストがない代わりに開発経験がほとんどの職種で必須となっているサイバーエージェント社とは対照的です.
インターンシップ情報
DeNAのエンジニア職におけるインターンシップは,以下の三種類が存在します.
- 短期のソフトウェアエンジニアリングコース(9月頭の3日間)
- 長期のソフトウェアエンジニアリングコース(8月から10月のうち,2~3ヶ月間)
- 中長期のAIスペシャリストコース(8月中旬から9月中旬まで)
特にソフトウェアエンジニアリングコースの二つについては,事実上の早期選考だといえそうですが,これに落選してしまっても改めて本選考に参加できると明記されています.
短期ソフトウェアエンジニアリングコース
日数は三日間と短期ながら,参加報酬が10万円と比較的高額であることが特徴です. チーム対抗でアプリの改修に取り組む,という内容のようで,募集職種もサーバーサイドエンジニアとWebフロントエンジニアとなっていることから,フロントエンド/バックエンドでチームを組むことが想定されていそうです.募集人数は20~30名程度と,その他のインターンシップと比べればまだ倍率が高くないといえます.
長期のソフトウェアエンジニアリングコース
短期とは異なり,実際に実務に近い開発を行う就業型のインターンシップとなっています. 時給は2500円です.募集人数は数名程度とのことなので,倍率は非常に高くむしろ本選考に合格するよりも難しいタイプのインターンシップといえるでしょう. 以下の職種で応募が行われています
- サーバーサイドエンジニア
- Webフロントエンジニア
- MLOpsエンジニア
- データエンジニア
中長期のAIスペシャリストコース(8月中旬から9月中旬まで)
実際にAI技術を活用しているプロジェクトのデータにさわり,事業データを事業に活用することを目的としています. 時給はソフトウェアエンジニアリングコースと同じく2500円ですが期間が異なり,最短二週間の最長四週間となっています.募集人数は10名程度です. 体験記:プロ野球の実データをAIで分析! なぜDeNAのサマーインターンは現役アナリストも驚く成果を出せるのか? なども参考になるかもしれません.
選考スケジュール情報
25卒以降,DeNAは早期選考を始めました . 25卒であれば2023年秋まで(夏インターンを含む)が早期選考,それ以降が本選考となります. 早期選考で内定を出す可能性があることが明言されているほか,早期選考で不合格でも本選考に参加可能です.
選考内容
Webテスト,ES選考,技術面接,ワークショップ面接,最終面接と記載されています. すべての面接はエンジニアが実施すると明記されていて,例えば日本企業でよくある「人事面接」はないようです(「人事面談」がないとは記されていませんが……).
おすすめの選考対策
DeNAの選考を有利に進めるには,以下のような選考対策がおすすめです.
Webテスト対策
Webテストは,AtCoder のAtCoder Beginner Contest のC問題を解けるようになることを目標にしましょう. AtCoder Beginner Contestは,初心者向けのコンテストで,C問題は難易度が低く,かつ,実際に就活で出題されるような問題に近いものが多いです.
DeNAが求めている人物像
DeNAのエンジニア職種紹介ページ には,「様々な役割・専門性を持った方と協働できるコミュニケーション力、ソフトウェアエンジニアとしての専門性を高める自己研鑽・自走力、それぞれの役割はありつつも、チームと連携し結果を出すオーナーシップ。」とあります. メガベンチャーの中でも特に技術による専門性を重視しており,例えば自分で勉強して新しい技術を取り入れ,何かサービスを作ったことがある,といった経験があると特に有利に働くと思われます.
上級職について
DeNAでは,通常のエンジニア職のほかに,エンジニア(AIスペシャリスト)職という制度が設けられています.
AI技術の研究活動を行う研究職というよりは.AI技術を用いたサービスの開発を行うエンジニア職という位置づけで,年俸は600万円~となっています. ジョブが比較的明確に定義されているのが特徴で,「論文を書くなどの研究活動に専念したい人はDeNAにはあっていません。 AI技術を深いレベルで理解し、サービス要求に応じて応用実装する能力とマインドが求められます。」とのことです.
また,AIスペシャリストとして採用されると年に一度国際学会に聴講参加が社費で行えるとのことです.その他AIスペシャリスト関係の情報は,データサイエンティストとして新卒で入社した方々の記事 も参考になるかもしれません.
社風について(主観を大いに含みます)
副業が明示的に許可されているほか,上長や人事の介入なしで部署異動ができる制度/社内での求人ジョブボードなど,「働き方を自由に選ぶ」ことが重視されているように思われます. 多くの企業がAIに力を入れている昨今ですが,DeNAはKaggleに特に力を入れており ,GCP の料金補助や,社内で定められたランクに応じて,業務時間を使ってKaggleに参加できるようにするなどの福利厚生が与えられています.
事業内容について
ここまでDeNAの募集に関する情報を並べてきましたが, ここからはその事業内容について,IR資料をベースにまとめます. 採用情報と同じく,これも公開情報をもとに資料をまとめています. より詳しく知りたい方は,DeNAのIR資料 をご覧ください.
DeNAの事業は,以下の4つのセグメントに分けられます.DeNAでは他会社に出向することもあり,その方々については出向先でカウントされていると思われます. また,エンジニアに限定した人数は記載されていないため,様々な職種の方の合計人数です.
ゲーム事業(497人(本社)/1140人(連結会社))
DeNAの事業の柱であり,売上収益の47.4%である640億円を占めています. セグメント損益は96億円で,全体の営業利益が42億円であることを考えると,ほとんどゲームがすべての利益を生み出しているといっても過言ではないでしょう. 一方で,売上収益もセグメント損益も2021年3月期からは単調に減少しており,いかに他の事業が成長するまで持ちこたえる,ないしはUカーブを描くかが重要になってくるといえそうです.
ライブストリーミング事業(129人(本社)/202人(連結会社))
ライブコミュニケーションアプリ,VTuberアプリと,個人が配信するプラットフォームを提供する事業が中心です.売上収益は401億円ですが,セグメント損失は6億円となっています. 成長フェーズの事業と位置づけられており,投資を回収するための黒字転換がスムーズに行えるかが鍵となりそうです.
スポーツ事業(20人(本社)/244(連結会社))
野球,バスケットボール,サッカーに進出しており,売上収益は210億円,セグメント損失は2300万円となっています.
ヘルスケア・メディカル事業(20人(本社)/674人(連結会社))
医療関係者間コミュニケーションアプリが例として記載されていましたが,他の事業に比べると資料における具体性が薄く,売上収益も70億円,セグメント損失も22億円となっており,まだ存在感の大きい事業とは言い難いように思われます.ただ,2022年には買収を重ねており,大きく変動を迎えている事業でもあります. DeNAのサービス一覧 のページを見ると,ヘルスケア・メディカル事業に相当するサービスを多数展開していることが伺えます.
これらの事業のほか,新規事業に携わる人員が73人,管理部門の従業員が587人です.
まとめ
以上まとめると,「ゲーム事業で収益を支え,その間にほかの事業,特にライブストリーミング事業を黒字化させる」という戦略がうかがえます. 実際にコロナウイルスの影響でスポーツ事業は苦戦を強いられていましたが,ゲーム事業の収益がこれを支えコロナ期脱出まで乗り切ることができたと言えるでしょう. すべての事業にエンジニアはかかわりますが,事業規模や性質,そして人員の配置状況から鑑みると,ゲーム事業やライブストリーミング事業にかかわることになる方が多いのではないかと思われます. DeNAも比較的細かく採用職種が分かれており,「ゲームに絶対かかわりたい!」という場合にはゲームクライアントエンジニアに応募するのがよいでしょう.一方で,他の事業に関わりたいと考える場合には職種だけで絞り込むことは難しく,ESや面接で自分の希望を伝えることが重要になってくると思われます.